・アパート 〜その3

 アパートの1階は押し込み強盗に入られやすいという点で危険ではあったが、ある日、珍客が訪れた。 猫である。ニャーニャーとなくので部屋に入れてやったら、ありとあらゆるところを嗅ぎまわったのち、安全が確かめられたのか、 部屋の真ん中で横になった。私は、腹ばいになりながら本を読んだりパソコンを打つのが癖になっているので、 猫とちょうど同じ目線になっている。寂しかったので、仕事をしながら猫をそのままにして置いた。 寝ていると、朝方5時ころに窓のそばで猫がうるさくなきだした。窓をあけてやると、外に出て消えて行った。 その日は、大学の帰り友人と夕食を食べに行ったのでアパートに帰るのが遅くなった。 アパートに帰ってみると、昨晩の珍客がアパートの入り口のドアに行儀よく座っていた。 私はびっくりするやうれしいやらで、猫を抱いて部屋に入れてやった。 部屋に入れた後、24時間営業のコンビニが近くにあったので猫の餌を買いに走った。 ストライキで大学に通うのや街行くのには苦労したが、その日以来、猫のおかげで寂しくなくなった。 私が大学から帰ってくるまでアパートの曽於で待っており、朝5時になったら出て行った。 トイレもきっと外でするのだと思う。猫の餌だけは、いろいろと変えてやらないと飽きてくる。 手で皿から外に出してしまう我儘さだ。でも、あとは何のじゃまにもならない。 時々、なでててやるのを要求してくるのでなでてやればゴロゴロ言いながらそれで満足している。 時々論文をまとめるので忙しくて要求にこたえてやらないと、パソコンのキーボードの上を歩きだすから、 キーボードが何たるものか分かっているようだ。 気が向けば、腹ばいになりながらパソコンを打つ腕の中に体を横たえて眠り始める。 この猫の段ボールの上にタオルを置いて寝床を作ってやったら、ちゃんとそこで寝るから不思議だ。 そうしているうちに、別れの日がやってくることになった。誰もいない部屋の中で、猫には心からお礼を言った。 シーンとしてだれもいない部屋の中に猫が一匹いるだけでこちらも勉強に集中できたからありがたい友人に巡り合えたものだ。

(おわり)


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