大学の国際化
 しばらく書いていない間に,何人かの職員や学生から,楽しみに読んでいます,と言われ慌ててしまった.言い訳をすれば,教員でありながら,ちょっと忙しい部署に異動してしまったからだ.

 この国民一人ひとりが知らない間に,すっかり国際化の波の中で生活させられている現代において,大学の組織が,今頃になって騒ぎ出した.とうとう自分の大学の組織だけのことを考えていたら,生きていけないというところまで来てしまったらしい.入学定員にしてからそうである.
少子化で学生の人数が少なくなってきていることは目に見えてはっきりしている中で,日本国内にいないなら外国から呼ぼうという発想である.これはめんどくさいことになるが悪いことではない.お金が入るばかりではなく,優秀な海外からの学生は日本人学生の刺激になることは間違いない,今,大学は海外からの学生を必死になって集めようとしている.
しかし,集める人間と教える人間は別である.当然のことながら,ここに軋轢が生まれることになる.ただでさえ,定員削減で忙しいのに,どうして留学生の面倒まで見ないとならないんだという話になる.私は,この軋轢を含めて歓迎すべきことだと思う.軋轢や議論のない集団がこれからどうやって生き延びられるというのだ.軋轢や議論の中からこそが,淀んで沈滞した集団のこれからの進むべき道を切り開いくのだと思う.

 隣町の大学の友人から聞いた話であるが,その友人が国際交流センター長になったというのだ.国際交流センター長は役員でもなんでもないのだが,これから大学の国際化に必要だというので,学長が彼を役員会の末席に座らせることにしたというのだ.
彼は,国際化推進基本計画というものを策定して,アクションプランを作らされることになったそうだ.まず,役員会でそのアクションプランを提案し,各部局からの意見を聴取した.なぜ聴取したかというと,学内の国際化には,国際交流センターが所管のことではないことが多いから皆さんのところで国際化するためにはこのようにしたらいかがですかという提案をしたためだ.具体的に言うと,学生の話である入試課は国際交流センターの管轄ではない.
学生のカリキュラムに関することも国際交流センターの管轄ではない.すべて,国際交流センターの管轄外の部局に,国際化するための提案をした.上がってきた意見は,そんなことはしたくないという意見ばかりであったそうだ.おまけに,ある事務官は,彼のところに,「役員でもないあなたがこんなことを我々に命令する権利があるのか」とすら言いに来たそうだ.それでも,彼は,気を取り直して再度,役員会にアクションプランを提案して,各部局の意見の不合理性を訴えたというのだ.私には,とてもそんなことはできないかもしれない.
私のこの友人もわざと相手に喧嘩を売るようにして議論を吹っ掛けるのを得意としていたので,みんなを驚かせてしまったようだ.さらに,この友人は,根回しというのが大嫌いで,公の場面で正々堂々と議論しようじゃないかという,アメリカナイズされた面もある.
結果として,だれからも意見が出ず,議論にすらならなかったそうだ.その中の筆頭理事は,中央教育審議会の議論に鑑みてとかアドミッションポリシーとの整合性とも考えていかないとならないなんてわけのわからないことを言って時間稼ぎをしようとしたらしいというのだ.
それに対して,学長は,これからの大学は国際化だとしつこく言っている割には,その理事の話に云々とうなずいていたそうだ.学長も,大いに暴れてくれと言ったにもかかわらず,すっかり態度を変えて,みんなとよく話し合って決めてくれと言ったというから,まあ,そんなところだろうと想像はつく.みんな,友人が国際交流担当なんだから,友人がすべき仕事だと思っていることが誤解の始まりらしい.
先ほども書いたが,学生の話は入試課や教務が関わらなかったらできない話なのである.国際交流担当はそうした部署を動かす権限がない.もしかしたら,学長も国際交流担当だけでできると思っているのかもしれないと友人は笑っていた.

 友人の大学は,議論ができない大学の役員会らしいが,そういうところは多いのかもしれない.きちんと根回しをして提案するというのが,成熟した大人のやり方だとでも言いたいのだろう.
この友人の話は他人事ではない.私も,この友人と同じ案件を抱えているのだが,提案しないで時間つぶしをしている方が賢くて人望を得るやり方なのかもしれないと思い始めてきた.
大学は,だれのためにあるのか.言うまでもなく学生のためなのだが,実は,日本国民のためにあるということを忘れた大学の幹部連中が日本にはたくさんいるのだと思う.それでも大学は動いていく.それは,まじめな教員とまじめな事務職員のおかげなのだとこの友人の話を聞いてつくづく思った.
※写真は,バンクーバーからシアトル方面に1.5時間くらい車で行くと,クレッシェントビーチという,プライベートビーチで有名なところがある.その夕日は,そこに行った時のもので,もう一度訪れたいと思っている.

  


 


2012/2/15

▲ページTOPへ