・小学校外国語活動ためのカリキュラム その1

1.英語学(語用論)と英語活動のためのカリキュラム
1.1 小学校外国語活動と社会構成主義との接点


 言葉に関することを科学的に扱いはじめてから、やっと100年が立とうとしています。いまでは、その扱い方は大きく分けて実証主義的扱い方と社会構成主義的扱い方の二つに分けられます。前者は物事を分析しながら研究していく方法であり、後者は物事を総合的にとらえながら研究していく方法です。社会構成主義は、言語教育に限って言うなら「学習者とそれを取り巻く環境のことを常に中心に捉えて考える学習理論で、学習者を含めた社会全体」が研究対象になります。社会的構成主義を中心とした学習論は、学習者を社会的構成員の一人と考え学習に影響を与える社会的要因に焦点を当てる考え方です。 Littledyke (1998b、 pp. 26-27)によれば、社会的構成主義と教師・生徒との関係を次のように述べています。


The principles of constructive teaching and learning apply particularly to approaches to children’s learning, but teachers are also involved in constructing views and strategies for teaching as part of their own teacher professional development. A learning classroom can be seen as a collaborative process and a shared experience where children and teachers are learning together, though the primary focus of the learning is different. In this, the children engage in developing meaningful constructs from the planned curriculum while teachers form constructs about how to help them learn.
(社会的構成主義教育と学習の原則は特に子供たちの学習へのアプローチにあてはまりますが、教師自身も彼らの教師教育の一部としての教育に対する社会的構成主義観と戦略にも関係しています。学習の主要な焦点が異なっても、教室は、子供たちと先生が一緒に学んでいる所であり、そこでは、学習教室は共同の過程と経験をする所とみなすことができます。この中で、子供たちは意味ある構成概念を計画的カリキュラムから発達させることに係わり、先生方は彼らが学ぶのを援助する方法について構成概念を作ります。)




 大切なことは、指導理念と方針を決めることです。はっきりとした指導理念と方針を決めないでどんどん進んでいけば、必ず学習の本質と方法に不整合がおきます。たとえば、文法シラバスで構成されている教材や教科書にコミュニケーション活動を中心としたカリキュラムを入れると必ずどこかに矛盾が生じます。小学校外国語活動のカリキュラムを語る上で、この社会構成主義の理念は基礎的な枠組みになりうると考えます。


 社会構成主義のカリキュラムを研究しているLittledyke, M. (1998)は、社会構成主義に基づく授業の展開を次のようにまとめています。


1.子どもたちが事前に持っている経験や知識は、学習に対しての子どもたちの関心、好奇心、動機を引き起こすのに重要な役割を果たします。子どもたちが共有している経験や知識を授業に生かしましょう。
2.その子どもが生活する社会的環境とその子どもとの関係や教室でのその子どもの立場はその子どもの学習に重要な役割を果たします。どの子どもも参加できる授業を構成しましょう。
3.子どもたちが学習することに、受身であってはなりません。子どもたちが積極的に参加できる授業を構成しましょう。つまり、子どもたちが発見することや、何を考えているのかを、何を感じているのかを、何をすることができるかを明らかする授業を構成しましょう。
4.子どもたちが見つけ出したもの、あるいは、達成したことの重要性を子どもたちが認識できる授業を構成しましょう。
5.日常生活や子どもたちの活動に、子ども達が学習したことや達成したことを関連させることができるように授業を構成しましょう。


以上のLittledykeの学習に対する枠組みは、教材を作成したり指導したりしていく上での重要な枠組みとなります。具体的にカリキュラムや教材が決まり、指導案が決まった時、このLittledykeの考え方に照らし合わせてみるのも一つの方法です。



 では、実際に、「社会構成的カリキュラム」の理念を基盤にして学習目標の設定をして見ましょう。 子どもたちが事前に持っている経験や知識は、学習に対しての子どもたちの関心、好奇心、動機を引き起こすのに重要な役割を果たします。そのような子どもたちの関心や好奇心を引き出す学習目標の設定は、子どもたちが共有している経験や知識からくるものから作られていくようにします。子どもたちが社会の構成員の一人であるという社会構成主義の観点から次のような学習目標の設定が必要になってきます。


【目標1】数、時刻、月日などの最低必要事項や家庭・教室・学校のことを伝える。
【目標2】自分の好きなことを伝える。友達の好きなこと聞く。
【目標3】自分のしたことを伝える。友達のしたことを聞く。
【目標4】自分のしたいことを伝える。友達のしたいことを聞く。
【目標5】自分の予定を伝える。友達の予定を聞く。
【目標6】自分のしなければならないことを伝える。田面立ちのしなければならないことを聞く。
【目標7】行事について話し合う。
【目標8】自分の体の具合を述べる。友達の体の具合を聞く。
【目標9】感情の表現。
【目標10】場所の説明をする。
【目標11】ものの説明をする。
【目標12】いろいろな活動。
【目標13】社会的事象について説明できる。
【目標14】自然環境について説明できる。
【目標15】異文化についての写真やビデオを見て、誰が、いつ、どこで、何を、何のためにしたかなどのポイントを押さえて言い換えができる。


以上の設定は、小学5年生と中学3年生とでは同じ学習目標の設定でも表現方法の違いややり取りの豊富さの度合いを変えることによって、学習すべき学年が異なってくる方法をとります。つまり、学習教材は、小学5年生〜中学3年生までを直線的に配列するのではなく、上記の学習目標の設定を学年に応じて基礎的な提示の方法から応用的な提示の方法へと繰り返し学習するように配列していくのです。たとえば、目標3の「自分のしたことを伝える。友達のしたことを聞く」の教材の例は以下のようになります。留意点は、小学5・6年はダイアローグがAとBの一度の会話で終わるようにすることです。


小学5年:A: I went shopping with my mother. What did you do?
B: I went to Daimaru department store with my father and mother.
小学6年:A: I went shopping with my mother. What did you do last Sunday?
B: I went to Daimaru department store with my father and mother.
中学1年:A: What did you do last Sunday?
B: I came to school for the baseball team practice.
中学2年:A: What did you do last Sunday?
B: I went to New Chitose International Airport to meet my uncle.
A: Who went there with you?
B: My father, my brother, and I went there. I saw a lot of people there.


たとえば、上の例では、同じ学習目標でも、I wentの内容を自分の家の近くから部活動、空港へと社会的行動範囲を広げて行きます。つまり、I wentを一回出して終わりにするのではなく学年を追って学習者の社会的行動範囲を広げて行き、何回でも教材の中に現れるようにも工夫しなければなりません。「私」から「友人」そして「社会」へと広げていくのです。それでは、具体的英語文はどうやって選択したらいいのかを次章以降で説明していきます。






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