・小学校外国語活動ためのカリキュラム その3

2.教師の英語力を付けるための根市の教材の利用


2.1「自分の意思を表す表現」


前章では英語の基礎的表現の条件は次の条件を満たすことを説明しました.


法則1:英語教材は「話し手=自分=I」を中心にした表現と話し手に極めて身近な表現が基礎だ.
法則2:英語教材の配列は「自分=I」から家庭・学校・それを取り巻く社会へと広がりを持たせる.
法則3:いろいろな場面で応用可能な概念的構造を作り出す.
法則4:「自分=I」で始まる日常的に使用頻度が高い言語材料を選ぶこと.
法則5:話し手に極めて密接で使用頻度が高い表現.たとえば,依頼表現,許可表現,各種疑問文とその答え.


すべてではありませんが,この条件をおおむね満たしている根市(1965)の教材があります.根市の教材を見ながら説明していきます.まず最初に,「自分の意思を表す表現」を紹介します.



これは「自分の意思を表す表現」をグループ化したものです.それぞれに動詞がつく形になりますので,根市(1965)はこれを次のようにモデル化しています.



   前の楕円形には「自分の意思を表す表現」が入り,それに続く四角には動詞が入ります.私たちの頭の中には「自分の意思を表す表現」はモデルのように概念化して頭の中に入ることに成ります.これを,概念化していくためには,「何度も唱える」作業が必要になります.これは決して暗記やパターンプラックティスとは根本的な発想が違います.このことを,「概念アプローチ」と名付けましょう(この章の終わりで説明します).


2.2 団子四つ



これは,日常の当たり前の話をする時の教材です.一つ一つの円(団子)が同じ概念構造の集まりです.それぞれの団子から一つずつ赤い点線の矢印に沿ってつないでいきます.たとえば,「友達から次の日曜日に買い物に行こうという誘いの電話が入ったことを説明する」のには下のようにいえます.



この「団子四つ」を使うと簡単に自分のことが説明できるようになります.


 もちろん,このような教材が小学生にそのまま使えるわけではありませんが,どのようにして教材を集めるかは理解していただけると思います.また,これらは教師が自分の英語力向上に使える教材であることは確かです.このほかに,根市の教材は,たくさんありますので,機会を見て皆さんに紹介し使い方のワークショップを開く機会ができればと思っています.


2.3 概念アプローチ −斉唱で概念的構造を定着−


ここでは,「概念アプローチ」を利用した英語の定着法を説明します.「概念アプローチ」とは,完全な文型を練習するのではなく,頻出頻度が高い同じ機能を持つ語群構造を何度も口頭練習する方法です.すでに述べましたように使用頻度が高い語群に「I am going to」の仲間で「根市の自分の意思を表す表現」という表現があります.概念的構造とは,完全な文ではないけれども欠かすことのできない頻出頻度が高い語群構造のことをいいます.概念的構造ですからいろいろな場面で応用可能です.すでに説明したように,I am going to buy a new cameraという構造は,ある一つの場面でしか使えませんが,I am going to buyは「何かを買う」という意味ですから「何」を買うかによって使われる場面はたくさんあります.その意味では,I am going to buyよりもI am going toの方が応用可能になってきます.概念はある意味では入れ物です.これは,I am going toという入れ物があって,「〜ます」と表現する場面では何でもその中に入れられるという風にも考えることができます.今,入れ物を[ ]のようにあらわすと


[I am going to [buy [a new camera]]]


となり,I am going toという入れ物にそれ以下の[buy [a new camera]]が全部入っていると考えることができます.

 ただし,これだけでは学習するためには何の意味もなく「根市の自分の意思を表す表現」のように「頻出頻度が高い同じ機能を持つ語群構造」を集めて初めて完成します.


 さて,この概念的構造を一斉ドリルで定着していきます.方法は,何度も口頭で唱えさせる単純な方法です.ドリルを「無意味な単純暗記」ととらえて授業の敵のように考えている教師がいますが,それは間違いです.確かに,ドリルしている理由もわからずに闇雲で単純な暗記の繰り返しは,子どもたちの思考力を貧困にしたり,発見学習の阻害になったりしますが,ここで行う一斉ドリルは,学習者の頭の中に「概念構造という入れ物」を作ってやる目的を持った作業です.この目的には,根市(1965)の教材(1965)が非常に優れた教材を提供してくれています.  また,外国語を習得できるというのは,母国語で形成されていく「概念」と結びつくことによって達成されます.したがって,「概念」と結びつくような「語群」を用意し教えることが外国語学習の重要な条件です.要約すると,


    .概念と結びつく語群→類似の機能を持つ構造
    .概念と結びつく語群→非完成構文


といえます.


【ドリルの例】
1. I am going to ? I want to ? I have to
2. I am not going to ? I don’t want to ? I don’t have to
3. Are you going to ? Do you want to ? Do you have to
4. What are you going to do?, What do you want to do?, What do you have to do?
5. I didn’t go ? I didn’t see ? I didn’t hear
6. Did you go ? Did you see ? Did you hear
7. Where did you go?, When did you go there?, Why did you go there?, How did you go there?, Who went there with you?


ドリルの方法は,簡単です.本カリキュラムで提案する「一斉ドリル」は,すでに習った事項も今後習う事項も関連付けて「口頭練習をする」方法をとります.生徒に暗証させようとしないで,ただ,ひたすら何度も口頭で読ませてください.英語を学び始めの場合は,文字を示しても読めませんが,無理に読み方を教えたりもしないでください.口頭練習をする目印になればいいのです.できれば,毎日,朝の会の時間にでも唱えさせるようにすると相当な効果が上がります.  その効果は,応用可能な形になっていますから,子どもたちがこの概念構造群を利用して完全な英語文をいろいろな場面で使う欲求が増大していき,また,その欲求に答えられるドリルになっているということです.このドリルが子どもたちが実際に使用することによって言葉として活性化していくとき,このドリルが闇雲で無意味な活動ではなくなるのです.








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